そんな、ほとんど着物を着ない現代の生活の中でさえ、和服姿の人を見ればなぜだか素敵だなと思ったりノスタルジーをかき立てられたりする。
それほど、日本人にとって着物は思い入れの強い衣服なのだと思う。
私の着物にもその時々のいろいろな思い出が詰まっている。
私は幼い頃から着物が好きだった。はっきりと覚えているわけではないので母の話によるとだが、三歳でつくった振袖をことある毎に着せてくれとせがんでいたらしい。
明治生まれの祖父がいつも紬や丹前を着ていたのが格好良くて、早くあんな風に着物が着られるようになりたいと思っていた。
高校生になって日本舞踊を習い始めるとますます着物に傾倒していく。
大学生になると専攻したのが舞踊ということもあって、モダンダンスやジャスダンス、タップダンス、モダンバレエと洋舞漬けの毎日を送る。そして、研究室は民俗芸能。民間に伝わる芸能を研究対象に選んだ。日本的なものから一度距離を置いたことで、日本を再認識する。やはり最後には着物に戻ってくるのだ。
「きもの」には様々な側面がある。
着物は民族衣装であり、儀礼服であり、ファッションでもある。伝統芸能においては欠かせない装束であり、すばらしい工芸品である。またアパレル産業からみれば規模はあまりにも小さいとはいえ、一部は大量生産される工業製品でもある。
では、私にとっての「きもの」とは何か。
>>続きを読む